「パティシエが行く」〜旬素材を求めて農園へ〜

Vol.04

Wheat “Fukuhonoka”

有限会社 紫竹カントリー(津山市上田邑) 代表取締役 日笠瑛十郎さん

ご当地ブランド小麦「ふくほのか」の発起人

津山市上田邑地区の12haの畑で小麦や米、ブロッコリーなどを栽培している日笠瑛十郎さん(72)。2004年頃から津山地域で小麦の栽培を手掛け、推進してきた発起人的な存在です。日笠さんが栽培している品種は、津山産小麦「ふくほのか」。津山市が、2008年より津山産小麦を対象に「地産地消」の推進を始め、2012年に岡山県の推奨品種に認定した、いわば津山のご当地ブランド麦なのです。この「ふくほのか」は、JAを通じて津山市内で製粉され、「津山のほほえみ」という名前でも販売されています。
「ふくほのか」のネーミングの由来は、「福をもたらす穂の香りのかぐわしい小麦」だとか。小麦粉のなかでも、グルテン分の多い中力粉に近い薄力粉で、ふっくら、しっとりしていて、口に含むと豊かな小麦の味と香りがするのが特徴。収量性や品質が高く、加工に適していることもあって、うどんや和・洋菓子などさまざまな用途に利用されています。

生産者の高齢化に対応できる小麦への転作を推進。

もとは養豚業からスタートし、1985年より黒豚の養豚、加工品の生産・販売・レストラン経営へと6次産業化を進めてきた日笠さん。2015年に、息子の靖十郎さんに代替わりし、自身は畑作に転向したのだそう。小麦栽培を本格的に手掛けたのは15年以上前のことだといいます。「津山市内でも、約20年前には小麦を作っとったんですが、買い上げ単価が低くて生計を立てるのが難しい。それで小麦をあきらめとったんです」と当時を思い出します。 転作するとしても、水稲も大豆も夏の暑いさなかの作業は高齢者には負担が大きい。けれど、小麦なら、秋に種を蒔いて6月頃に刈り入れをするから時候的には作業が楽なのだと。「稲みたいに苗代をつくったり除草作業をしたりする手間もいらんし、年2回程度薬剤散布をするぐらいでいい。これなら年寄りでもできる」と考えた日笠さん。折よく、国からも、小麦か大豆、飼料用の稲への転作をすれば助成金が出るとあって、津山地区で最初に栽培を始めました。そして、地域の稲作農家への働きかけもしていくことになったそうです。

品質の高い小麦を求め、単作にこだわり15年。

現在日笠さんの畑では、小麦「ふくほのか」を3.8ha、水稲を8ha作付けしているほか、ブロッコリーや大豆を0.3ha栽培しています。「今はトラクターのパーツを変えるだけで、田んぼをしながら麦の種を蒔ける機械があるからね。肥料も一緒に入れて撒いておいたら、それで終わり。あとは、5月頃に薬剤散布するのと、冬に除草が1回あるだけ。今は夏に稲、冬に小麦という具合に年間でまんべんなく作業ができるようになったかな」といい、小麦の収量をできるだけ増やすことにも工夫を重ねてきました。
日笠さんの畑では、二毛作も行いつつも、メインは単作なのだといいます。「このあたりでも二毛作をする人は多い。田んぼの借り入れ後に植えるから、一見効率がよぉて収量も上がるように思えるけど、稲を刈り取った後に植えた麦はあまりいいものにはならん。それは、どうしても田んぼは普通の畑より湿気が多くなるからでな。実際には、収量も上がらんし、品質も落ちる。それで、うちは単作もしとるんです」。収量だけではなく、品質を大切にしたいという日笠さんの思いは、こうしたこだわりにも表れています。

「ふくほのか」のおいしさ生かし、津山らしいお菓子を

こうした小麦栽培推進活動のなかで出会ったのが、WAKANAの大塚社長でした。出会いは、16、7年前。美作大学技術交流プラザでの分科会の参加者として知り合い、その後、農商工連携による地域ブランドの育成にともに協力してきたのです。
津山市では、この地産小麦を使った地産地消を進めるために、「津山市特産品開発プロジェクト」を結成。声がかかった津山市内の菓子業者8社で、津山小麦を使った「津山ロール」などの地産地消商品の開発も進めてきました。
その1社であるWAKANAの大塚さんも、さまざまな試作を重ねてきました。「ふくほのかなどの国産小麦とは違い、外国産小麦(外麦)はものによって癖がありましてね。たんぱくや脂質を均質化したり、小麦でんぷんやグルテン、灰分を配合することで性質をコントロールしたりして、ブランド化しているものもあるそう。また、国産の小麦は、20年ほど前までは製粉技術が未熟だったため、目の細かさを追求すると歩留まりが悪くて価格が高くなってしまったり、目が粗ければ混ぜた時に粘りが出すぎたり…となかなか品質が安定しなかったんです」と話す大塚さん。

そこで、今回の試作段階では、粉の粒子の形状や水の吸収率などを細かくテスト。ケーキとして使った場合の状態などについて日笠さんへのフィードバックを重ねました。そしてようやく「ふくほのか」のおいしさと特性を生かして誕生したのが、「津山ロール」、「鏡野ほろり」、「津山ドーナツ」なのです。「これからはもう以前のようには活動できん」とつぶやきながらも、これまで農業6次化や小麦栽培推進の旗振り役として地域の農家をけん引してきた日笠さん。今後も地域の農家発展のため、縁の下の力持ちとして尽力してくれそうです。

WAKANA SELECTION

「日笠農産」他の小麦粉「津山のほほえみ」を使った、わかなの商品

「津山ロール」
「鏡野ほろり」
「津山ドーナツ」

低タンパク質で、水分を加えても固まりにくい「ふくほのか」を使った「津山ロール」の生地は、ほかの小麦粉よりしっとりふっくら。また、固まりにくい性質を生かし、口の中でほどける食感を「鏡野ほろり」で表現しています。また、「津山ドーナツ」のもっちりしっとりした食感も「ふくほのか」ならでは。ふんわりしたおいしさを引き立てています。

  1. シリーズ

    「パティシエが行く」〜旬素材を求めて農園へ〜

  2. 八重桜の塩漬け

  3. 木成り熟成フルーツトマト

  4. 津山産小麦

  5. いちご

  6. ブルーベリー

  7. 大玉の清水白桃

  8. 酵素で育つピオーネ

  9. 幻の酢梅

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