「パティシエが行く」〜旬素材を求めて農園へ〜

Vol.07

Shimizu-Hakuto

清水白桃生産者 田淵多農園(苫田郡鏡野町)

木成り完熟にこだわり出荷

広々と田畑が続く苫田郡鏡野町の中心部・公保田(くほうでん)地区。ここに白桃とブドウの果樹園「田淵多農園」があるとのことで、収穫シーズン真っ盛りの7月末にお邪魔しました。屋号は、現・代表の田淵智之さんの父で、先代の多(いさお)さんの名前を冠して。乳牛の飼育と米作りからスタートした農園は、昭和42年の国の減反政策によって稲作を減らし、種もみ作りに転向。米からの転作としてブドウ、桃の栽培を次々手がけてきました。現在は妻・和子さんと息子の学さんの親子3人で営んでいます。
田淵さんが作るのは、紅清水、清水白桃、夢白桃など、岡山県を代表する品種が中心です。そのこだわりは、木で熟れた完熟の桃だけを発送すること。市場や流通業者が間に入ると、なかなかできないことだそう。そのため、熟れ頃を見極めて早朝から収穫し、朝6時と、夕方にその日の桃を摘みたてで出荷します。甘くて、果汁がしたたるような瑞々しさ、陶磁のように美しく白い大玉が評判となり、北海道から沖縄まで、全国から毎年注文のリピートが来るほどです。

天候不順に打ち勝つ工夫を

大塚さんとの出会いは、学さんと農業後継者のイベントで同席したのがきっかけ。それ以来、「ワカナ」店頭でのフルーツ直売イベントなどでも、田淵多農園の桃やブドウを紹介してきました。「ワカナ」の大塚社長も、田淵さんの畑でできるそんな質の高い桃に惚れ込んで、長い取引を続けているそうです。
苗から育てた桃は、いい実ができるまで約5年もの歳月がかかります。天候によって出来栄えが大きく左右される栽培の難しさも、白桃は際立っています。「近年の異常気象もあって、清水白桃は作りにくうなったなあ」とつぶやく智之さん。昨年、今年は、長梅雨やその後の異常な高温で、かなり困難を極めたそう。雨で落果したり、生育中に種が割れて実が大きくならなかったり、変形したり…。それに加えて、高温によって収穫時期が通常より早まってしまい、かつてはお盆の帰省みやげに重宝されていたのに、お盆時期にはもう収穫が終了してしまうのだという。高温多湿のため、今までは見られなかった病気も発生しています。「特に最近多いのが、穿孔細菌病。葉っぱに穴が開くんじゃけど、実についたらアバタになったり、ひどいときは穴が開いたりするんよ。今年は7割も処分せんといけんような状態でした。規格外品になるからなあ。例年なら、逆に7割は出荷できたんじゃけど…」と嘆きます。

熟練の手しごとで、収穫

それでも、品質の高い白桃が出荷できるのは、田淵さんの工夫あってのこと。農園では、これまで棚仕立てで栽培していました。労力が比較的かからず、大玉が成ることがメリット。ただ、棚を作る材料に大変なコストがかかることや、棚に実がひっかかってロスがでることも多いため、現在は吊り仕立てを採用しているのだといいます。広大な畑を維持するには、日照りが続く昨今は潅水作業も毎日の大変です。
「でも、何より大変なのは収穫じゃ」と智之さん。その理由は、桃がとてもデリケートな果物だから。慣れない人が桃を扱うと、持ったところに手形がつき、そこから茶色く変色してしまうのです。「3本の指でそっと取るのにコツがいるんですよ。はさみをつかわず、枝を軽く『こぜる』んよ」。「こぜる」というのは、ひねりながら手折るイメージ。昔は、子どもの頃から農家の子どもたちは手伝いをして習得したけれど、季節だけのアルバイトを雇っても、なかなか上手に摘果するのは難しく、人手が足りないのも悩みの種です。「熟していい匂いがすると、虫がすぐにつく。虫だけでなく、タヌキやキツネが木に飛びついて実を落とすこともあるんよ」と苦々しく笑う田淵さん。昨今では、山から下りてきたクマが取ることもあるのだそうで、収穫のタイミングは実に難しいようです。

家族が協力し、丹精込めて

他の果物よりもデリケートな性質を持つため、手間がかかる桃づくり。最近の異常気象などで、外的な環境はどんどん変わっていますが、変わらず全国の人々に愛される桃を作り続ける田淵さん一家。研究熱心な智之さんは、新たな栽培技術を勉強しに、県内のあちこちへとたびたび足を延ばして、時代に即した栽培方法を習得しています。また、新たな品種「岡山白桃」を試験的に栽培するなど、今後を見据えて、研究を続けています。
「やっぱり家族の協力があってこそできること」と田淵さんはしみじみ語ります。桃づくりは学さんがメインで担当しているそうですが、枝のせん定や収穫は熟練の智之さんが、箱詰めや出荷は和子さんが担当するなど、家族それぞれの役割分担があり、みんなで協力し合っているから、今年もおいしい白桃を届けることができたとほっと安堵したように話す田淵さん。家族だから、直接言葉でねぎらうことはあまりないけれど、互いへの感謝の気持ちは、日々のさまざまな瞬間に伝わっているのですね。

WAKANA SELECTION

田渕多農園の清水白桃を使ったわかなの商品

「白桃ジュレ」

清水白桃をきめ細かくなめらかに裏ごし。清水白桃本来のおいしさと風味をそのままに閉じ込めた濃質なジュレ。白桃の香りがやさしく広がり、果肉の食感とくちどけのよさが贅沢に味わえるWAKANA自慢の商品です。

  1. シリーズ

    「パティシエが行く」〜旬素材を求めて農園へ〜

  2. 八重桜の塩漬け

  3. 木成り熟成フルーツトマト

  4. 日本鶏へのこだわり

  5. 津山産小麦

  6. いちご

  7. ブルーベリー

  8. 大玉の清水白桃

  9. 酵素で育つピオーネ

  10. 幻の酢梅

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