「パティシエが行く」〜旬素材を求めて農園へ〜

Vol.01

Salted cherry blossom

八重桜の塩漬け生産者 「津山市手作り加工研究所」(津山市)

桜の名所・津山らしい銘菓を

先代が、和洋菓子の卸売業から創業したパティスリー・WAKANA。オーナー・パティシェの大塚さんは、神戸で5年間菓子作りの修業を積み、24年前の1995年に地元鏡野町に帰郷しました。「地元に帰ってみて気づいたのは、津山といえば県下でも有数の桜の名所なのに、意外にも桜を使った銘菓がないということでした。それで、最初に考えたのが、お花見弁当を思わせる箱に自慢の上用まんじゅうを9個詰めた「桜まんじゅう」だったんです」と。この狙いが見事に大当たり。見た目も美しく贈答にも最適だと評判になったそうです。ところが、人気商品の宿命か、しばらくすると次々と他社が類似品を販売し始めました。「これでは元祖がどれかわからなくなってしまう。他社が真似できないような、ワカナだけのこだわりのあるオリジナル商品を作らなければ」と大塚さんは意を決したそうです。そんな時知ったのが、津山市押入地区で婦人団体が手作りしているという八重桜の花の塩漬けの存在でした。

津山の加工品を作り続けて30年

桜の塩漬けを作っているのは、津山市内から集まった女性約10人からなる「津山市手作り加工研究会」の皆さん。津山の地場産農産物を使って、加工・販売を行っている50代~70代の女性グループです。おもな活動内容は、「地産地消・安心・安全」をモットーに、地元産物を使った加工品の生産です。たとえば、夏・冬のふるさと小包や桜のゼリー、トマトケチャップ、甘干西条柿、粕漬、かき餅、パスタなど実に10種類以上の加工品を生産しているのだと話してくれたのは、会長の溝口節子さん。30年以上前からこうした加工品作りに取り組んできた息の長い活動をされています。

実際に、八重桜の収穫する様子が見られるということで、八重桜の咲く4月終わりに押入地区にお邪魔してみました。「お花が8分咲きぐらいの時に取るのが一番ええんよ。開いてしもうたらいけんの。つぼみの方がきれいに仕上がるからね」民家前の道の脇に植わった大きな八重桜の木から花を摘みながら、溝口さんが教えてくれます。今日集まれた3人で、ひとつひとつ花を摘んではカゴに入れていきます。花の「袴」がつかないよう、花びらがばらばらにならないよう気を付けながら、やさしくそっと摘んでいく作業は相当手間と時間がかかるように見受けられます。

おかあさんたちの手摘み・手作業

そうやってカゴに桜の花がいっぱいになると、塩漬けにするための前処理をしておきます。まずよく水洗いをして水をしっかり切り、重さを量っておきます。そして、花の重さの20%の塩と桜の花を桶に交互に重ねてゆきます。塩をした花の上に、漬物用の重石を載せて、置いておくこと丸一日。水分が抜けたら今度は丸2日ザルに並べて天日干しします。干した桜の花を容器に入れて約1年間発酵させるとでき上がり。じっくり発酵させることで、きれいな桜色になるのだそうです。

桜の色と香りで春を届けて

春を思い出させる桜の香りと、ほのかな塩味の付いた桜の塩漬け。なんとも手の込んだ作業です。作り方については、岡山県の農業普及センターや本、資料などで勉強し、試行錯誤の末、今のやり方に落ち着いたそうです。「手間ばかりかかって採算は合わんのよ。でもね、『色も香りもやっぱり手作りの本物がええ』いうて皆さん喜んでくださるんです。それが嬉しいからやめられんのよ」と溝口さんは目を細めます。毎年10㎏以上を漬ける作業は大変な労力が必要です。喜んでもらえることがやりがいにつながっているといいます。

できた桜の塩漬けは、4月に津山城址内「鶴山館」で桜まつりの期間中販売されるほか、茶会にもさくら茶として使われ、「手づくり桜の花茶」(30g350円)という商品名で販売もしているそうです。

WAKANA SELECTION

「津山加工品研究所の桜塩漬け」を使ったわかなの商品

やさしい桜風味の「津山ロール」

1本 1300円(税別)

津山鶴山公園の満開のサクラをイメージしたロールケーキ。津山産小麦に紅麹を混ぜ込んでふんわりと焼き上げ、餡にも津山産桜葉を刻んで混ぜ、しっとり優しい味わいに仕上げています。そしてはらはらと手のひらに舞い降りる花びらをイメージして、桜の塩漬けを上に飾っています。

  1. シリーズ

    「パティシエが行く」〜旬素材を求めて農園へ〜

  2. 八重桜の塩漬け

  3. 木成り熟成フルーツトマト

  4. 津山産小麦

  5. いちご

  6. ブルーベリー

  7. 大玉の清水白桃

  8. 酵素で育つピオーネ

  9. 幻の酢梅

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